アルテミスと呼ばれる人がいた。この世界に存在するたった一人の女性。 唯一絶世の美女だと皆は噂する。 労働も納税の義務も課されず、自治政府官邸の豪華な離れに暮らす。 公衆の面前に姿を現すことはなく、ラガシュに移住するまでの生い立ちは謎に包まれている── 四十世紀。度重なる戦争と自然災害により崩壊し、すべてが失われた世界。 地球上に生き残ったのは街一つ分の人間――それもただ一人を除いて男性ばかり。 彼らはラガシュという都市国家を設立し、瓦礫からかつての文明の遺産を拾い上げつつ細々と暮らしていた。 一方でアルテミスと呼ばれる唯一の女性はラガシュ自治政府の手厚い保護を受け、 公衆の面前に姿を見せることなく政府官邸離宮に囲われている。 唯一の任務は月に一度、選ばれた街の男性と逢瀬を重ねることなのだとか……。 ある日、貴金属収集業を営む少年リウのもとに自治政府から郵便物が届く。 それはアルテミスと次の満月の夜に会うことのできる「権利証」だった。 「僕、まだ十三歳なのに……」 驚きと動揺と、好奇心を隠しきれないリウ。 彼女との出会いが、自身とこの星の運命を大きく変える発端となることなど知らずに。 >購入ページ(Kindleストア)へ ・リウ・カハラ・ディッカー 十三歳の少年。絶望的な状況ながらも毎日明るく前向きに暮らしている。 瓦礫から貴金属を分別して自治政府におさめるのが仕事。 身よりはおらず、ラガシュに移住する前の記憶をすべて失っている。 ・アルテミス この世界に生き残った唯一の女性。 自治政府の保護を受け、官邸離宮に暮らしている。 ラガシュ設立から七年経つ現在もその素顔はベールに包まれたまま。 ・イナンナ リウの友人。見た目は可愛い女の子だけど残念ながらやはり男の子。 リウと同じ長屋に暮らし、料理と家事を積極的にこなす。 なぜ女装を好むのかは結局不明のまま終わる。 ・エンキ イナンナと同じく長屋仲間。筋骨隆々なスキンヘッドのおじさん(自称お兄さん)。 街の城壁周辺の警護任務を仰せつかっている。 リウにとっては父親兼兄のような存在。 ・ルガル 自治政府官邸長官。ラガシュの最高権力者。 アルテミスほどでないにしても滅多に人前に出ない。 エンキ曰く「長官というよりは王様のよう」らしい。 *タイトルの意味 本作のタイトル『狂月姫』は、「きょうげつひめ」ではなく「アルテミス」と読みます(まったくもって読めませんが)。 ですが「きょうげつひめ」でも構いません(?)。 どちらで読みたいかは、誰と誰の物語を中心にとらえるかによって変わってくるのではと考えています。 *ディストピアSF? メソポタミアンファンタジー? あらすじでご紹介したとおり、今回は行っても行っても瓦礫しかない、絶望的に荒れ果てた世界が舞台となっています。 いわゆる「ディストピア」でしょうか。 ジャンルは一応SFとさせてもらっていますが、ファンタジー色の強いSF……もしくはSF風味のファンタジーと言ってもいいかもしれません。 ある地域の神話や古代文学から着想を得た作品です。 『狂月姫(アルテミス)』 ◇発売日:2019年1月4日 ◇小説(電子書籍) ◆ジャンル:SF・ファンタジー ◇表紙イラスト:silversnow様 ▲TOP |