花が咲かない椿作品紹介月を抱く、星を走る作品概要 > ツキホシ放送局



 
 
『月を抱く、星を走る』に登場するバーチャルバンドメンバー4人がお送りするトーク番組です。

★彩子(サイコ)……主人公、ロシア&ロシア語をこよなく愛する女子大生兼超能力ベーシスト
★麻樹……働き者のギタボ&バンマス@博多
★ピコ……天才キーボーディスト、麻樹の大学の後輩

★ナイル……綿菓子頭の社会人ドラマー@小樽


麻樹
:で?
彩子:はい?
麻樹:この先どうトークを進めていくかって聞いてんだよ。
彩子:もう、そんなこと聞かないでよね……バンマスなんだから麻樹が仕切ってよ。
麻樹:ニェット(嫌だ:ロシア語)。なんで俺なんだよ。主人公なんだからお前がやれよ。
ピコ:とか言いながらアサ、実は進行役やりたいんじゃないのぉ? あたしには分かるんだから。
彩子:ていうか何、その手元にある激しく書き込みと付箋メモ貼りの施された『すぐに使える! 司会進行マニュアル 音楽・エンターテイメント編 改訂第二版』って。ぶぶっ、超やる気満々じゃん。
麻樹:……分かったよ。やってやるよ。
彩子:やったね。押し付け成功。いぇい!
ナイル:アサピー、彩子ちゃん、ピコ、ズドラーストヴィーチェ(こんにちは:ロシア語)!
本文では場の和ませ係およびいじられキャラに徹していたナイルのお出ましさ~♪(ミュージカル風)。いやー、遅れてすまない。今日は一段と張り切ってヘアセットしていたらずいぶんと時間がかかっちゃってね。
麻樹:一段と張り切ってセットしてそれかよ。
ピコ:キャハハ! 確かに今日は一段と髪の毛の絡まり具合がきめ細やかくてふわふわで気持ちいい。
彩子:アハハ、ほんとだ。本物の綿菓子さわってるみたい。
ナイル:むわーっ! くすぐったい、やめるんだ二人とも!!
麻樹:メンバーと各々の台詞癖が出揃ったところで、ぼちぼち始めるとするか。

―ぶっちゃけ、バーチャルバンドって活動してみてどうだった?
麻樹:まぁ、正直やり辛かったよな。対面で生の音声聴きながら合わせるに越したことはない。
彩子:だよねー、わたしも主催しつつ秘かにそう思ってたんだ……って、こら! それを言っちゃおしまいでしょ。
麻樹:なかなか面白い経験ではあった。前夜にできなかったことが、寝て起きたらできるようになってるってやつ。
ピコ:あたしもすっごく楽しかったよ。日本の首都と北国と南国に分かれて暮らすメンバーがバンドを組むなんて普通じゃ考えられないよね。
ナイル:僕は主要キャラかつあんなに楽しそうだった君達二人が内心疑問を抱きながら活動してたってことにショックを受けているんだけど……気を取り直して、同じく有意義な音楽活動ができたと思ってる。あんな楽器・音響設備完備でしかも実世界からの物品持ち込み自由なバーチャルスタジオに5秒ですっ飛んでいけるなんて素晴らしい! 事務局の彩子ちゃんには心底感謝してる。
彩子:事務局って……。喜んでもらえて何より。わたしもみんなと一緒に音楽やってるときほど楽しい時間はないと思ってるよ。
麻樹:しかしいくら持ち込み自由たって、観念的な世界にカレーうどんを導入してきたのには参ったよなぁ、ナイル。匂いがこもって仕方がない。
ナイル:は、はは……いやあれは、夜に練習するとどうしてもお腹が空くからさ。
彩子:わたしはそれよりも、麻樹がペリエ48本入り2ケースを台車に積んで現れた時の方がぶったまげたよ。何事かと。
ピコ:キャハハ! そうそう、本文には書いてないけどそんなこともあったよね。どっちもおかしかった。
麻樹:……ピコのキーボードは、バーチャルスタジオでもリアルで弾いてるのを聴くのと全く遜色がなかった。だから他の三人もそれぞれ自分本来の音をちゃんと発揮できてることが分かって嬉しかったかな。ナイルのドラムは常に安定してたし、誰かさんのベースもミスは多いけどいい役回りしてたし。
彩子:そうそう、才能あふれる某鬼ギタボ&バンマスのご指導の成果により、革新的なスピードで上達できたしね。もうちょっと頻繁に集まれるとよかったんだけど……なぜか月2回、半月の日にしかバーチャル空間招集能力を発動できないっていうのがなんとも。
ナイル:そんなことないさ。逆に次の上弦の月と下弦の月の日に集まるまでにうんと上手くなってみんなをびっくりさせようって、励みになったよ。
ピコ:同感。あまり会えないからこそ会える日までの時間が楽しいの。
麻樹:だな。
彩子:本当に? そんなに楽しみにしてくれてたんだ。わたしも、みんなに会うのが楽しみで仕方がなかった。もちろん今だって……
一同:弦月の夜が、待ち遠しくてたまらない!
麻樹:ハモったな。
彩子:ま、ちなみにここもバーチャル放送局なんだけどね。
麻樹:はい? マジで!?
彩子:気づいてなかったんだ………。

―今ここでだからこそ話せること、思い切って白状してみよう。
ピコ:彩子ちゃん、ごめんなさい。今だから言えることだけどあたし嘘ついた。
彩子:な、何? どうしたのよ。急に深刻な顔で。
ナイル:ま、ま、まさか……実はなんだかんだでアサピーのことがずっと好きだったとか!?
ピコ:はじめの顔合わせの時、あたしがアサをこのバンドに誘ったって言ったと思うけど、あれ実は逆でさ……
麻樹:おい、ピコ!
ピコ:「なぁ、ピコ。このメン募(バンドメンバー募集情報)気になると思わないか? 『わたしには、忘れられない歌があります。そんなふうに聴く人の耳と心に残る音楽を一緒に作っていきませんか?』だって。なんかいいよな。グッとくるよな。ピコもそう思わないか? 思うよな? なんだか分からないけど、俺はこの子に揺るぎないシンパシーを感じるんだ……(後略)」で、要約すると「一緒にこのバンドに入ってみないか」。
ナイル:おぉっ! それは初耳だ。なーんだ、はなから二人は相思相愛だったんじゃないか~♪(ミュージカル風)
彩子:あー笑いすぎてお腹痛い。でもちょっと嬉しいかも。えへへ。
麻樹:……(赤面)。
ナイル:そうだアサピー。恥ずかしついでにあの台詞今ここで言ってもらえないかなぁ?
麻樹:何だよあの台詞って。
ナイル:決まってるじゃないか。この物語の看板ともなるあの決め台詞さ!!
ピコ:あたしも聞きたい! ナイルともどもやんごとなき事情で生台詞のシーンに立ち会えなかったもんね。ねぇアサ、言ってよぉ~
麻樹:ったく……ピコに頼まれたら断れない俺の弱点をフル活用しやがって。分かったよ、今夜は特別に言ってやるよ。
ナイル:さぁさぁほらほら、ちゃんと彩子ちゃんの方を見て(と無理矢理二人を向き合わせる)。
麻樹
「誰かさんのベースの弾き方。月を抱いてるみたいだ」

ナイルピコ花笠ADキタ━━━━o(*´∀`)○━━━━━!!
彩子:……(赤面)。二人ともキャラ変わってるし。
麻樹:リスナードン引き確定だな。

―今後の「バーチャルバンド」の活動方針と目標は?
彩子:わたしはね……
例えば千年後に誰かが聴いても、いい曲だなって素直に共感してもらえる。そんな音楽を作っていきたいと思うんだ。もちろんみんなと一緒にね。
「このバンドの曲、いいと思わない? かなり昔に活動してた人達なんだけど」
「あぁ、うん。すごくいい。いつ頃の人?」「千年前」「いや昔すぎだろ」なーんて話題にされてたら嬉しいな。
ピコ:十分ありえるよ。あたし達だって千年前の雅楽を鑑賞するし、和歌の意味を知って感動する。同じことが今から千年後に起きたってちっともおかしくない。
ナイル:それは素晴らしい! 千年と言わず一万年、百万年経っても歌い継がれる曲をリリースしていこう。音楽は不老不死、歌う火の鳥なのさ~♪(ミュージカル風)
麻樹:古語の対訳歌詞カードが必要になりそうだれども。
彩子:作中でも何度か言及してるけど、バーチャル空間にみんなを集めるのってすっごく体力使うんだよね。疲れてきたから今回はこれぐらいにしとかない?
麻樹:トークのネタも尽きてきたことだしな。
彩子:それでは皆さん、ロシア語で「さようなら」は……
一同:ダスヴィダーニャ!

— 収録後 —
麻樹:何だよあの締め方。たまたま終わりだけ聞いた人がいたら、完全にNHKロシア語会話講座だと誤解されるだろ。
彩子:いいじゃん別に。あーよくしゃべった。
ピコ:お疲れ様ー。
ナイル:みんなお疲れ〜。僕の声ちゃんと拾われてたかな?
彩子:うん、普段の電話以上に大音量だったから絶対大丈夫。
麻樹:次回はゲストでも呼ぶか。となるともうあの人しかいないよな。
彩子:そう、司兄様しかいないよね!
ピコ:えーあたし礼二さんの方がいい!
麻樹:別作品のキャラかよ……。

(終)