花が咲かない椿作品紹介シオンの遥か


「いいですかライヤ博士。地球は半径でおよそ六千四百キロある。大きくて深い。
でもその中身はぎっしりつまっているんです。僕達がいる地面から中心に向かって地殻とマントルと核で
構成されていることぐらい知っているでしょう。(中略)
 夢のない、残念なことかもしれませんけど……もう一度言います。
地球内部は他のものでいっぱいなんです。空想の入り込む隙間なんてこれっぽっちもない」

「なぜそう言える?
 悠、お前はそのぎっしりつまっているという地球の中をすみずみまで誰かが見て回ったというのか?」





 
表紙・挿絵イラスト:水無月 弍録

ユダヤ人冒険家ヨシュア・レヴィが残した暗号に導かれ、伊勢神宮の橋の袂から地底世界へ潜り込んだ悠達。
地球の中心部にあるという幻の理想郷に無事たどり着くことができるのか……?
「きっとこれは、奥底で眠る真実を探し出すための旅」
個性派キャラクター達が繰り広げるアドベンチャー小説。

◇発売日:2016年1月1日
◇小説(電子書籍)
◆ジャンル:冒険


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● 塩野 悠 Shiono Yu
都内の私立高校三年生。推薦入試で早くも進路が決まっている。
卒業まで穏便に過ごすことが第一の目標だったが……。
クセのない優しい男の子。

● 園江 美月 Sonoe Mitsuki
悠の高校の先生。担当は現代文。美人だけど授業が厳しいことで有名。
「園江遥」名で小説を投稿している。
思わせぶりな所作と昭和口調(?)で悠をどぎまぎさせたりさせなかったり。

● ライヤ博士 Dr. Laiya
悠の友人。博士と称しつつ本当に「博士」なのかどうかは甚だ疑わしい。
エキセントリックな言動でたびたび悠を翻弄する。
地底世界の存在を主張する冒険家ヨシュア・レヴィ氏を崇拝している。
現在は定職につかず実家の文具店を手伝ったり手伝わなかったり。





 かつて、地球内部に別世界が存在するという「地球空洞説」が様々な人々によって唱えられてきました。
言うまでもなく科学技術の発達した今日では、地球は地殻とマントルと核によって構成される中身の
つまった球体であるという認識が当たり前となり、この説は完全に否定されています。
 ですが、ライヤ博士はどうしても自分の目で確かめに行かないと気が済まなかったようです。

 情熱的な学説(?)を展開し、悠と園江先生を地底世界の旅にいざなうのでした。


「地球を家に例えてみよう。四十六億年前、偉大なる宇宙の神は地球という素晴らしい家をお造りになられた。
家は住むためのもの。外装と中とだったらどちらが大事だろうか──尋ねるまでもない。家の主役は中。
中のためにこの星は存在するんだ。君もそう思うだろう? 地上世界なんて言ってしまえばベランダだ。
俺達はベランダに暮らしていたにすぎない」

「わたしは家の中でベランダが一番好き」

「そう、俺達はちょっといいベランダに暮らしていたにすぎない。どうだ、そろそろ中に入らないか?
時を越えて玄関が開こうとしている。長らく来客のなかった家にお客さんを迎えようとしているんだ。
行こう。きっと中はいいぞ、素晴らしいぞ……!」

(だめだ……)





 リンクを貼っている章は試し読みできます。
 世にも不思議な地底世界の旅、その意外な展開と結末は是非本文でお確かめ下さい。

  一 星宮の朱門
  二 翼失いし鳥達
  三 水上都市ゼノリス
  四 エルツにおける安息日
  五 嵐が丘
  六 レナ記 - 都の果て
  七 悠遠領域 
 

「はじめからそうだった。本当は地底世界の理想郷なんてどうでもよかった。
ただ、確かめたいことがあって」

「確かめたいこと?」






「嬉しいわ。わたしもずっと忘れられずにいたの。素敵な人だったなって。
いつかまた、会えるといいなって……」




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