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テルミネ・ターミナ制作室 ―これが結構大変だったのよ

『テルミネ・ターミナ―私が遅いんじゃない、時間が流れるのが速いのよ』出版にあたって 
 ―小説を書こうと思ったきっかけとか、今の心境とか


はじめはエッセイ中心の執筆活動だったんですが。
 文学作品という形でまとまった文章を書くようになってから二年以上経ちますが、最初の一年間はエッセイ中心の執筆活動でした。当時は小説というとすごい分量を書かなければならず、大変な時間と労力がかかるというイメージがあり、自分には無理だと思って手を出そうともしていなかったのです(今考えてみれば「食わず嫌い」だったのかもしれません)。そんなわけで、しばらくの間は原稿用紙4~5枚程度の単発エッセイを時間のある時にちょこちょこ書いてためていくというお気楽な物書き人生を送っていました。

試しに書いてみようかなとふと思ったんです。 (ちょうどエッセイはネタ切れだったし)
 一作目のエッセイ集『花が咲かない椿』を出版してから1ヶ月ほど経った頃のことでした。ちょうどその頃夏で、実家に帰省した際にこの本を家族に見せたところ、「こういう実際にあったことを元に小説を書いてみたら?」と言われたことがきっかけで、小説にも興味を持つようになったというわけです。
 早速戻ってからネタにする題材を集めて、基本的な本文の表記ルールやプロットの書き方マニュアル片手におそるおそる文字を打ち込みはじめました。エッセイと違って一般的な小説の場合、少なくとも原稿用紙200枚以上は必要になります。何もいきなり長編でなくても、掌編や短編からはじめてもよかったのですが、どうせ書くのなら誰がどう見ても小説と呼べる体裁のものを書きたいと思い、出口の見えない真っ暗な森の中を手探りで進む思いで書き進めていったのをよく覚えています。
 
それで、なんとか書きあげてみました。
 結局、実話は元にせず100%フィクションで、しかもイメージしていた通り大変な時間と労力がかかりましたが、何ヶ月かの執筆期間を経てようやく花笠香菜の小説第一作目が完成しました。
 その記念すべき小説が、今回の『テルミネ・ターミナ―私が遅いんじゃない、時間が流れるのが速いのよ』
……ではありません(笑)。実はこの作品は、その次に書いた二作目になります。
 一作目を本にしなかったのは、まずは初めて書いた小説ということで、とても出版に耐えうるレベルでないためです。もう一つ深い訳があるのですがそれは追々お話しするとして、とにかく恥ずかしかったからというのが理由です。 と言いつつ、一作目の反省を踏まえて書いたはずの『テルミネ・ターミナ』も、今自分で読み返してみると十分に恥ずかしいのですが(自分で発注しておきながら何度途中で出版差し止めしようと思ったことか)。

これが楽しくてたまらなくて……。
 ですが、この最初の作品を一通り書き上げたことで、これからは小説をメインに執筆活動していきたいと考えるようになりました。とても大変ではあったけれど、同時にとても楽しかったからです。書き進めていくうちに、物語の中の登場人物が勝手にしゃべり出すわ、とんでもない行動を起こすわで、最後には著者が最初に考えていた結末すら変えてしまうほど彼・彼女達が生き生きと動くようになり、おかげで自分も生き生きとした時間を過ごすことができました。書き上げた原稿を印刷した時の紙の厚みを感じた時の、自分が何か形のあるもの(その品質は別として)を生み出したんだという達成感と感動が忘れられないことも大きな理由です。

恥ずかしいやら嬉しいやら。
 というわけで、今回初めて小説を出版させて頂くにあたり、恥ずかしいやら嬉しいやら様々な思いで胸がいっぱいです。
 次回こそは恥ずかしく感じることもなく終始堂々と発表できる作品が書けるよう、引き続き鍛錬を続けていきたいと思います。

(2012/08/19)


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