エッセイ集『研究室の舞台裏 インテグラル』の内容を、別作SF小説『新約幻想ラボラトリー』の主演キャラが紹介します。 キャラ同士の対談を通じて本家の物語の方にも興味を持って頂ければ幸いです。 ◆キャラクター紹介 *アグネス 『新約幻想ラボラトリー』の主人公。今から千年後の世界に存在する研究機関デュアルユニヴァース・ラボラトリーで事務スタッフ(物語中では「アドミナ」という役職名)として働く。キレやすいのが玉に傷。 *ワタル 十四歳の少年。見習いアドミナ。機械いじりが趣味なのか、仕事そっちのけで超人的な改造作業に熱中してはアグネスに怒られている。 *孔明 デュアルユニヴァース・ラボラトリーに所属する若手研究者。入所年次はアグネスより下。 大昔の自転車の研究に傾倒す るあまり自分が自転車になってしまった。 ◆トピックス ―これはどんな作品ですか? ―どんな人に向けられた作品ですか? ―この作品の面白さ&売りは? ―話変わりますけど…… ワタル:ねぇ、アグネス~。 アグネス:何? 今座談会の会場設営で忙しいんだけど。 ワタル:どうしてボク達が千年前の研究所のお仕事生活にまつわるエッセイ集の紹介をしないといけないわけ? ボクなんて自分のラボで担当してるお仕事のことすらよく分かってないのにさ。 アグネス:いいの。千年経っても大して進歩してないんだから。この間一緒に紙の支払い書類のチェックに付き合わされたり安全確認の名目でさんざん研究室を巡回させられたりして分かったでしょ。 ワタル:そうだけどさ……(机の配置換えを手伝いながら)、ボク達はあくまで架空の物語だけどこっちは本当のことなんでしょ? うまく紹介できるかなぁ。 アグネス:うん、問題ない。事実は小説よりも奇なりって大昔から言われてるんだから。よし、これで会場設営は完了。あとはもう一名、もといもう一台の到着を待つのみね。 孔明:アグネスさーん! 遅れてすみません。我らがデュアルユニヴァース・ラボラトリーの将来を担う渋沢孔明博士、千年の時を越えてただいま到着ですっ! アグネス:ぎゃーっ! もう、人の足で駆け込むノリで突進してこないでって何度言ったら分かるのよ! ワタル:あーあ、せっかく机並べ替えたのにめちゃくちゃだね……。 ―これはどんな作品ですか? 孔明:えっとですね……「研究所」ってその名の通り研究をするために作られた組織で、そこには僕のような「研究者」と呼ばれる人達が日々研究活動に励んでいるわけなんですけど、その研究者の人となりや彼らとのやり取りにまつわる面白エピソードがありのままに書き綴られています。 併せて僕達『新約~』の世界では「アドミナ」と呼ばれる皆さん……あまり知られていない研究所で事務職として働く人々のお仕事生活を紹介する目的でも作られたエッセイ集ということになりますかね。 アグネス:はい、上手くまとめてくれてありがとう。そのパワポのプレゼンはいらないけどね。誰にも見えてないから。 孔明:はは、職業柄これ使って自分がやってることを説明する機会が多いもので。無意識に駆使しちゃうんですよね。 アグネス:リアルアドミナである著者が自身の研究所生活の中で見聞きした面白エピソードや珍事件、その中にあるちょっとした気づきとか感動なんかが織り込まれている。分量も紙の本で換算すると百ページぐらいだから、通勤・通学電車の中でさらっと読めちゃう感じかな。 孔明:誤解してほしくないのが、一貫して明るく好意的な姿勢で書かれているということ。決して組織の内情をさらし上げるような暴露本ではない点だけはここで明言しておきたいですよね。 ワタル:研究者さんって何考えてるか分からないところがあるんだよね。こっちの物語の中でアグネスもぼやいてたけど。彼らのお世話をするのが研究所の事務のお仕事なわけだけど、自分の想定の域を超えた言動をする人達からの質問とか頼まれ事とかにあたふたする様子がよく書かれてておかしかったよ。十四歳のボクでもお仕事しながら一気に読めちゃった。 アグネス:お仕事中に読書しないの。 孔明:うーん……我々研究者ってそんなにぶっ飛んでますかね。自分としては極めて普通なつもりなんですが。 アグネス:いや自転車が好き→自転車の研究をしよう→自転車のことをもっとよく知りたい→自転車の身になって考えよう→そうだ自分が自転車になろうなんて発想する人(車)が言えたことじゃないから。 ワタル:でも時には一緒に右往左往するのが楽しかったりする。それに、ああいう突拍子もない発想がボク達の暮らしを大きく変えるひらめきとか発見とかにつながっていくんだろうなって最近思うようになったんだよね。 アグネス:いいこと言うじゃない。少しは成長したようで何より。これもアドミナ検定一級の先輩による指導の賜物ね。 ワタル:……そんな所内検定試験があったんだ。初めて知ったよ。 ―どんな人に向けられた作品ですか? アグネス:研究所、研究者、研究所のお仕事。このどれかに興味があるなら一読してみる価値はあるかと。この業界をターゲットに就職活動中の学生さんにもおすすめ。落とされても責任持てないけど 孔明:そう、公式Webサイトや業務説明会では得られないありのままの僕達の姿を知ってもらえるはず。残念ながら自転車の姿をした研究者は実際にはいませんけどね。 アグネス:いなくていい。 孔明:もちろん興味がなくても大歓迎ですよ。むしろ本作は僕達に縁もゆかりもない方々にこそ読んでみて頂きたいんです。ほら、研究所とか研究者っていうと古典的な偏ったイメージが根強いじゃないですか。謎の薬品やら装置やらに囲まれた薄暗い研究室。そこにいるのはボサボサ頭に牛乳瓶のふちみたいな眼鏡をかけた白衣の研究者。何やら怪しげな実験を始めたと思ったら唐突に「○○くん(助手の名前)、これは世紀の大発見だ!」 ……以上の光景に違和感を覚えないそこのあなた、研究所&研究者を知らない度100です。ただちにKindleストアに走ってこの作品を読んで下さい。そこにはきっとあなたの知らない世界が広がっている! アグネス:関係者にしてみればかえって新鮮なんだけどね。あまりにステレオタイプなイメージすぎて。 とにかく、ふーん研究所ってこんなところなんだー、研究者ってこんな人達なんだー、世の中にはこんな世界もあったんだーなんて小さな世紀の大発見をしながら楽しんでもらうっていうのがこのエッセイ集の趣旨。 孔明:いいですね、小さな世紀の大発見。本著を手に取ったことがきっかけで世間一般にとって遠い存在だった僕達に少しでも興味と親しみを持ってもらえるといいですね。願わくは自分も将来研究所で働きたいと思ってくれるお若い読者の方が一人でも生まれてくれることを。 アグネス:こらワタル! 勝手に備え付けのTV会議システムを異時空間接続仕様に改造しない。 ワタル:てへへ。もう接続済みだよ。 孔明:向こう側でおぬしも悪よのうなんてほくそ笑んでますね。よりによって越後屋と悪徳大名の秘密会議に接続しちゃったか……。 ―この作品の面白さ&売りは? 孔明:聞いて下さいアグネスさん! なんと本著は「その時々の著者の所感が面白い」っていう本物の現役研究者さんからの感想を頂いているんです。これはもう間違いないですよ! アグネス:分かったから無駄に車体を回転させつつ飛び跳ねない。ただでさえあなたは場所取るんだから。 孔明:むぅ……すみません。ちょっとお手洗い行ってくるんで失礼しまーす。 (孔明一時退席) アグネス:座談会中にお手洗いに行く参加者(車)初めて見たよ。 ワタル:行く必要ない気もするけどね。孔明の場合……。 アグネス:事実の記述にとどまることなく、著者が思ったこと感じたことが節々に散りばめられている。笑い話だけに終始せず、時にはじーんと来たり考えさせられたりするようなエピソードも紹介されている。エッセイ集ならではの良さがまさにこの作品の売りだと思うのよね。 ワタル:ですます調の柔らかい雰囲気の文章で読みやすいよね。研究所業界特有の専門用語みたいなのが色々と出てくるけど、その都度分かりやすく説明してあるから何も知らないボクでもすんなり頭に入ったよ。 アグネス:うん、キミには少しは知っててもらわないと困るんだけどね。 ワタル:巻末には用語集もついてるから便利だったよ。著者の個人的な趣味やボク達の物語のことを匂わすような書きぶりも一部見られたけど。 アグネス:それから類似書がないということ。むしろあったら教えてほしいぐらい。オリジナリティという面でも自信を持っておすすめできるかと。 孔明:よっこらせっと。ただいま戻りました~。 「何の話してたんですか?」 アグネス&ワタル:えぇぇぇえええええええっ!!!! 孔明:いや二人とも知ってるでしょうがっ! これが僕の本来の姿ですよ。アグネスさんにはお忍びで飲みに行った時にも説明したでしょ? 完全に自転車になったわけじゃなくあくまで半人半チャリだって。クレームを受けて自ら人間バージョンに鞍替えしてきた次第ですよ。 アグネス:その鞍替えプロセスが永遠の謎だけど敢えて追求はしない。 孔明:本家の物語でだって、自転車キャラで売り出しておきながらなんだかんだで前半は人間率高かったじゃないですか。後半以降はキャラというよりほぼ交通手段と化してましたけど。 ワタル:ねぇ待って、二人でお出かけしたなんてボク聞いてないよぉ? 孔明:フッフッフ……抜けがけして悪いなワタル。たまにこの姿で出現してはアグネスさんにちょっかいをかけていたんだよ。そうやって僕と海塔さん※の間で揺れるアグネスさんの恋心を巧みに描いた物語が『新約幻想ラボラトリー』なのさ。 ※海塔博士:アグネスが専属で世話役を仰せつかっていた自他共に認める天才&容姿端麗な研究者。現在行方不明につき鋭意捜索中。 アグネス:はいはい、勝手にストーリーを改悪しない。行き着けのお店に行こうとしたところにあなたが着いてきただけでしょ。自転車に恋した記憶なんてかけらもないし、博士(海塔博士)に関してだって何度言ったら分かるのよ。あんなひと大嫌い、いなくなってくれてせいせいしてるって。 孔明:まったまたぁ~。大嫌いなんて言ったって僕達は分かってるんですから。なぁワタル。 ワタル:ちょ、ちょっと孔明……(席を立って孔明の耳元に駆け寄る) (やめなよ。博士がらみのことになるとアグネスはすぐにキレる&キレたら後のケアが大変なんだからさ……ゴニョゴニョ) 孔明:(しまった、そうだったなぁ……モニョモニョ。や、やばい。あともう一声で怒りのゲージが到達しそうだっ) アグネス:そこの二人、何内緒話してるのよ。 孔明:何でもありませんですっ。終了十分前のベルもなったところだし本題に戻りましょう。このエッセイ集の売りって他になんかありますかね? アグネス:そうね。あとはこれを読んでおけば、研究所や研究者が登場する小説を読んだ時に設定が理解しやすいし、情景が手に取るように浮かんできてよりよく楽しめるっていう点かな。 ワタル:確かにそうだね。そういう小説って今のところ一つしか思い当たらないけどね。 孔明:以上で作品概要と対象読者層とセールスポイントの洗い出しは一通り終わりましたね。ぼちぼちまとめに入りますか。 ―話変わりますけど…… 孔明:このツバサケイコさん作の表紙の二人↓ってアグネスさんと海塔さんですよね? アグネス:余計なこと言わない。こっちはエッセイ集なんだから違うに決まってるでしょ。 孔明:いやいや、僕達の小説の方の表紙および挿絵はこんさん作なわけですけど……モデルはきっと同じですよね。というか、そもそもインテグラルの表紙イラストから著者が想像(妄想)を膨らませて出来上がった長編小説が他ならぬ僕達のお話だっていう噂があるんです。まさに幻想から生まれた物語だったわけですね。 ワタル:著者の幻想力(妄想力)半端ないね……。 アグネス:隠されていた親子関係が発覚したところで最後におさらい。『研究室の舞台裏 インテグラル』ってどんな作品だっけ? ワタル:研究所でのお仕事生活を通じて見聞きした様々な物事……研究者の人となりや彼らとのやり取りをめぐる面白エピソード、珍事件、ちょっとした気づきや感動を事務職として勤務する著者の視点から明るく軽快なタッチでまとめたエッセイ集。 孔明:研究所や研究者に興味のある人はもちろんのこと、この業界に無縁だった方々も予備知識ゼロで気軽にお楽しみ頂けます。 アグネス:通勤・通学中の暇つぶし程度にさらっと読み流すのもよし、日々のドタバタ劇にくすっと笑ったり震災直後のエピソードにしんみりしたりするのもよし、はたまた「研究者の使命って何だろう」なんて夜な夜な考えふけるのもよし。ページ数以上に内容があることはわたし達新約幻想ラボラトリー主演トリオが保証するから一読して決して損はなし、と。 ワタル:やったね、上手くまとまった♪ 孔明:よぉし、これで任務完了! アグネス:待って。混同するといけないから最後の最後に。今回わたし達が紹介したのが『研究室の舞台裏 インテグラル』、これはエッセイ集でノンフィクション。そしてわたし達が登場する小説が『新約幻想ラボラトリー』、ほぼフィクション。お間違えなきよう。 孔明:「ほぼ」っていうのが少々気になるところではありますけど、よかったら僕達の物語も読んでみて下さいね。最後の最後にボーナスショットを拝めるはずですから。アグネスさんと海塔さんの激しく妖艶な……ごふっ アグネス:それ以上誤った情報を流したら海に沈めるわよ。 ワタル:ダメだよアグネス、備え付けのパイプ椅子で殴っちゃ……。 (チーン:終了のベル音) アグネス:はい、みんなお疲れ様。 ワタル:はぁ、やっと終わった。つっかれたぁ。 孔明:お疲れ様でした~。人間の姿だと体力消耗して仕方ない。やっぱ自転車の方が楽でいいですね。 アグネス:ではそろそろ持ち場に戻りましょう。わたしも博士を探さないと。まったくどこほっつき歩いてるんだか。 孔明:そうですね。千年後の世界へ、デュアユニへ帰りましょう。僕も海塔さん探しに全身全霊を捧げますから! アグネス:あなたはまず研究に戻って。足が必要になったら随時声かけるから。 孔明:はーい、了解です……って完全に交通手段じゃないですかっ。 ワタル:だいじょぶだよアグネス。博士はきっとアグネスのところに帰ってくる。ボクそんな気がするんだ。 アグネス:ありがと。だといいんだけどね。 (終) 『研究室の舞台裏 インテグラル』(2014/04/27) 研究所のお仕事の紹介、研究者や研究所をめぐる面白エピソードや珍事件、その中にあるちょっとした気づきや感動など。 『新約幻想ラボラトリー』(2015/01/01) 舞台は今から千年後の世界。天才脳科学者と称されるデュアルユニヴァース・ラボラトリーの海塔博士がある日を境に行方不明になった。「アドミナ」というラボ内の研究者の世話焼き職を仰せ使うアグネスは、落ちこぼれ研究者の孔明と見習いアドミナの少年ワタルとともにその足取りを追っていく。 やがて、デュアルユニヴァースに多額の研究資金を提供する謎の組織に博士が誘拐されたのではないかという疑惑が浮上して……!? 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